女性MRコンサルのフラームジャパンのインタビューページ

INTERVIEW

インタビュー

製薬業界を牽引するエグゼクティブの方々。
これまでの貴重なキャリアヒストリーや、ダイバーシティ推進が描く未来について、
インタビュー形式でお話を伺いました。

目の前のことを確実に。
そしてチャンスを掴んだ
日本稀代の女性社長

executive interview

ユーシービージャパン株式会社 代表取締役

菊池 加奈子

Kanako Kikuchi

インタビュイー人物画像
インタビュイー人物画像

外資系製薬メーカーで、唯一の女性社長として有名な、
ユーシービージャパン株式会社 https://www.ucbjapan.com/
の菊池加奈子代表取締役社長。
そのキャリアの築きは他に類を見ない、
大変希少なものでした。
彼女は如何にしてキャリアを形成してきたのか。
そして、現代を生きる女性に必要なキャリア的視点とは
いったい何なのか。
ヘルスケア業界唯一の女性活躍コンサルティング企業である
フラームジャパン代表・飯嶋真美との対談で
明かされる、貴重なインタビュー記事です。

INTERVIEW

インタビュー

たった一つのきっかけで人生は大きく変わる。 ポジティブなマインドで女性活躍の期待に応えながらキャリアを築いてきた。

 

キャリアを通して何かを成し遂げるなんて考えたこともなかったあの頃。

自分を見出してくれた上司からもらったチャンスを掴んだところから、人生が変わり始めた。

 

飯嶋:菊池さんのご経歴は、日本の製薬業界でも稀有でいらっしゃるかと思います。大学をご卒業されてから現在に至るまでのキャリアの流れや、そのときに考えていたことなどを教えていただけますか。
 
菊池:私は大学の薬学部を卒業しました。 同級生は企業に勤める、というより調剤薬局や病院で薬剤師として働く人の方が多かったです。特に女性の場合は、ほとんどが薬剤師として働き始めていましたね。ただ、私自身は「自分は働き始めても、すぐに結婚して専業主婦になるんだろうな」と思っていたので……。大学で募集していた非常勤職員として働き始めました。
飯嶋:そうだったんですか!?
 
菊池:はい(笑)2年間という期限付きで。まずはとりあえずそこから働いてみよう、という気持ちでした。
その後2年の契約期間を終え、「英語の勉強でもしてみようかな」と思い立ち、アメリカ留学を検討し始めました。……実際のところ、当時はクラシック・バレエにも凝っていたので、バレエ・レッスンをアメリカで受けてみたいなという気持ちもありましたね。語学兼ダンス留学という形で、アメリカへ発ちました。途中帰国も幾度か挟みながら、合計2年ほどアメリカに滞在し、帰国してからは地元の札幌で語学教師をしていました。
 

飯嶋:その後製薬会社と出会うきっかけは、どういったところにあったのでしょうか。

 

菊池:やはり薬剤師免許を持っていたことが大きかったですね。せっかく免許を持っているのだから、使わない手はないだろうと思って。運よくマリオン・メレル・ダウ社の札幌支店での求人を見つけたので、そこで学術兼管理薬剤師として勤め始めました。ただ、当時の仕事として主だったものは電話番やお茶くみ、掃除などでしたね。

 

飯嶋:菊池さんほどの方でさえ、そんな時代があったんですね。その頃は自分が将来社長になるなんて、考えたことはありましたか?

 

菊池:もう全然!当時は「仕事でこうなりたい」「キャリアを通してこんな自分になりたい」というイメージを持つこともできませんでした。最初のアチーブメントがコーヒーメーカーの購入をしたことだったぐらいですし、自分が仕事を通じて何かを成し遂げるとは考えることもなかったです。その頃すでに30歳近くになっていました。ただ、目の前の課題には、真剣に取り組んでいましたね。あとから考えてみれば、派手さのない小さなインパクトにしかみえなくとも、着実にこなしてきたのかもしれないな、と思うこともあります。

 

飯嶋:そこから現在に至るまでの転機は、何があったのでしょう?

 

菊池:マリオン・メレル・ダウ本社で、各支店の管理薬剤師を集めての会議があったんです。参加者のほとんどが女性でした。この会議を開催したのが新しくコマーシャルヘッドに就任された本国の方で、彼が私たちに「あなたたちはみんな薬剤師免許を持っているよね。なにか会社に意見はないか?」というようなことを尋ねられました。私はアメリカ留学の経験もあって英語が他人より話せたので、自然とその場にいる全員を代表して「私たちは確かに全員免許を持っています。だから、もっと会社も私たちを重用してもよいのではないでしょうか。」と意見を述べたのです。

 

飯嶋:当時、「英語ができる薬剤師」というのはかなり珍しかったんじゃないですか?

 

菊池:恐らくそのような本社会議で、英語で意見を述べる女性というのはかなり目立っていたでしょうね。そしたら、コマーシャルヘッドの方が「じゃあ、もっと仕事してみる?」とおっしゃって。それで本社のある大阪に呼ばれてしまったんです。

 

飯嶋:大抜擢じゃないですか!

 

菊池:そのコマーシャルヘッドの方が日本に来られるにあたって、課題としていたことの一つに「日本の女性活躍問題」があったようでした。日本では女性人財の登用がうまくいっておらず、それをどうにかしたい。だから、営業マネージャーとマーケティングマネージャーに女性を登用したかったのだと、後から知りました。彼がいなければ、今の私はなかったと言っても過言ではありません。

 

飯嶋:まさしくシンデレラストーリーですね!

 

菊池:私にはマーケティングの経験なんてなかったのですが、本社ではプロダクトマネージャーを務めることになりました。

ただ驚くべきことに、なんと翌年に新製品上市(開発した薬剤が新薬として承認され、市場に出ること)を控えるタイミングだったんです。

 

飯嶋:いきなりですか!?

 

菊池:はい(笑)今思うと「どうして断らなかったのだろう?」とも思いますが、これが私にとって大きなチャンスとなりました。

マーケティングがまったくわからない私に、コマーシャルヘッドの方は一からマーケティングについてご教示くださいました。当時はマーケティングという概念さえまだ日本では新しく珍しいもので、これを外国の方から感覚的に学べたことはとても貴重な経験でしたね。

 

飯嶋:まさしくご自身の行動と実力で、チャンスを掴み取ったのですね。当時周りの方はどんな反応をされていたのかも気になります。私は女性活躍推進の講演をする機会も多いのですが、大変失礼ながら障壁が男性という声も聞くことがあります。「女性だから、かえって簡単に出世できるんだ」なんて言ってくる方はいらっしゃいませんでしたか?

 

菊池:残念ながら思ってはいたのではないかと思います。ただ、そういった意見をコマーシャルヘッドの方は断固として許しませんでした。毅然とした態度で「そういった意見はよくない」と示してくださっていたので、とても安心して仕事をすることができました。とても嬉しかったですし、仕事を頑張ろうとしている女性には、自分を理解してくれる人が必要な時代でしたから。当時は女性も男性と同じように活躍していこう、という機運が高まりつつある時期でした。

 

飯嶋:それは大体いつ頃の時代のお話でしょうか?

 

菊池:ちょうど雇用機会均等法が施行された直後くらいの頃でしたでしょうか。

 

飯嶋:そこから要職に就かれるまでは、ずっとマーケティング部門にいらっしゃったのですか?

 

菊池:そうですね。マーケティング、新製品上市など……。あと、アメリカにいた頃は戦略…コーポレートストラテジーという部門で仕事をしていました。

寄せられた期待に、
自分の精いっぱいの結果で応える。

うまくいかないことがあっても、それを自分の足かせにしないマインドコントロールが成功の秘訣

 

飯嶋:菊池さんのバイタリティの強さ、そして決断力の高さにはとても憧れています。
 
菊池:ありがとうございます。
私は人から期待を寄せられれば、「それをまずはやってみよう」と思う性分です。だからこそまずは自分ができることを精いっぱいやってみるわけですが、そうやって頑張っていると、必ず周りの誰かが助けてくれるのです。そのおかげでここまで頑張って来られたところもありますね。
飯嶋:まさに人徳のなせる業ですね。今までのお話を聞いていると、自ら進んで、というより周囲から望まれるような形でキャリアアップをされてきているように思われます。
 
菊池:そうですね。99%周囲から望まれ、「それならやってみようか」といった流れでのキャリア形成だったかもしれません。私自身が誰かを出し抜こう、勝とうというより、調和を重んじながら仕事に向き合っていた側面が強かったので。
 
飯嶋:製薬業界では珍しいかもしれませんね。個人プレーで自分自身の成果を出すことにこだわりのある方が多いですから。おそらく不和もあったかと思いますが、そういった周囲の方とはどのようにコミュニケーションを取られていたのでしょうか?
 
菊池:私は昔からそうなのですが、他人と自分を比較しないんです。これは子どもの頃からそうで、恐らく両親の育て方によるものじゃないかと私は思っています。だから他人に何か心ないことを言われてもすぐに忘れてしまいます。ネガティブな感情を持ち越すこともほとんどありませんでした。気にしていられないほど忙しかったのもありますしね。
 
飯嶋:菊池さんはご自分に対して大変ストイックでいらっしゃいますよね。
 
菊池:私自身の集中力は大変高いと思います。2,3年でポジションが変わっていて、その中で結果を残していくことを考えると、1分1秒が惜しく感じられましたから。
 
飯嶋:そんな頻度で異動されていたんですね……。とてもお忙しかったんじゃないでしょうか?
 
菊池:そうですね(笑)ただ私の体感として、恐ろしく大変だったことだけは覚えているのですが、「何がどう大変だった」という点は、なぜだか記憶から抜けてしまっているんですよね。反対に仕事で得た達成感や喜びは、今でも色褪せることなく楽しい記憶として私の中に残り、昔の部下と思い出話に花咲かせることもよくあります。
もし嫌だったことやうまくいかなかったことばかり記憶に残っていたならば、今の私はありません。失敗は受け止めながら、それでいて受け流す。失敗を自分の足かせにしないようなマインドコントロールが重要です。
 
飯嶋:菊池さんはお話をお伺いするに、常に新しい環境で新しいことにチャレンジをされていて、あらゆることに対するモチベーションが大変高くいらっしゃるようにお見受けします。モチベーションを保つためにどんなことをされていますか?
 
菊池:もともと、日々の小さな達成感で喜びを感じるタイプなので、毎日の「これができた」「あれができた」という実感が十分モチベーションにつながっています。ただ、それでもうまくいかないときは汗をかくようにしています。思いっきり動いて、ワーッと汗をかく。以前はボディコンバットなんてよくやっていましたよ。今ではジムで走りこむことの方が多いですが。
 
飯嶋:遺跡巡りもお好きだと伺いました!
 
菊池:よくご存じですね!遺跡巡りには年に2回ほど行くのですが、これも大変良いリフレッシュになります。古代の人が作り上げた大きな遺跡を見て、「自分はなんてちっぽけな人間なんだろう」と気持ちを開放するのはとても気持ちがいいです。自分の悩みさえほんの些細なものに感じられます。

「できないことがあるのは当たり前」
どのような状況でも、女性には常にチャレンジして前に進んでほしい。

 

オフィスでの時間が貴重になりつつある現代。
だからこそ拓けるキャリアもある。

 
飯嶋:今回のコロナウィルスの影響で、「With コロナ時代」の働き方については、考えさせられることも多いですよね。
 
菊池:今後の傾向として、在宅ワークを推進する動きは当然高まってゆくでしょう。ユーシービーのような製薬メーカー・ヘルスケア業界は人々の健康に深く関わる分、そういった点には迅速かつ慎重な対応をしています。
だからこそ、出社して周りの人に会える時間というのは特に貴重になりつつあります。出社しても誰とも話さず、黙々と仕事をするなら、それは家で仕事するのと変わらないですよね。
オフィスにいる時間は、同僚と対話を持つことでより多彩なインスピレーションを得る機会として有効に活用していくことが大切になります。
飯嶋:菊池さんはお母さまの介護とお仕事を両立されていらっしゃいますよね。今回のWith コロナの煽りで在宅ワークも増えると、そういったライフイベントと仕事の両立はよりしやすくなるのかな、という気もします。
 
菊池:そうですね。私は運がいいことに母が介護付き老人ホームに入れましたし、兄弟は地元の北海道に残っていたこともあり、仕事との両立はそこまで難しい問題ではありませんでした。ただ、それらを独りで仕事と両立しながら自宅で行うとなると、その苦労は想像するに堪えません。
 

飯嶋:その苦労により、退職を決意される方も増えていますよね。

 

菊池:そういった方はやはり女性に多いですよね。とても残念なことだと思います。今まで努力してキャリアを積み上げて来たのに。……親の介護問題等のライフイベントは、ちょうどその人がマネージャーなどに昇格して脂がのってきたタイミングで起こることが多いですから。
そういった働き方の問題が、今回のワークスタイルの変動により少しでも解決されれば、人々のキャリアの築き方の幅も広がりますよね。

その人が真に幸せを感じる環境にいられるか。

話を聞いて、背中を押してくれる存在も
大切にしたいですよね。

 

飯嶋:フラームジャパンはヘルスケア業界における女性活躍推進事業を行っている企業です。菊池さんにとっての「女性活躍」とはどういったものでしょうか?
 
菊池:人それぞれ「幸せ」を感じる点は大きく違いますし、「これこそが女性活躍である」という決まった形はなくていいと思っています。
ただ、「これがしたい。挑戦したい。」と思ったときに「女性だから」という理由でままならないようなことだけはあってはならないと考えています。女性が女性であるために、また男性が男性であるために何かを諦めるようなことがない世界を作ることができれば、全員自分が幸せを感じる形でキャリアを形成することができるようになります。特に女性は、誰かがちょっと背中を押してあげないと、思い切れない場合も多いのではないでしょうか。そういった意味でも、頑張りたい女性の味方になってくれるフラームジャパンさんのような企業は、今後の日本においても女性にとってもっと知ってもらうべきだと思います。
飯嶋:ありがとうございます!菊池さんも部下の女性の方々から、ご相談を受けられることも多いのではないでしょうか?
 
菊池:相談してくれればまだいい方ですよ。ユーシービーをやめる女性に関しては、必ずエグジット・インタビューをするのですが、その際に「相談していいだなんて知らなかった」「もっと早く相談すればよかった」といった言葉がよく聞かれます。そういった言葉を聞くほど、私自身ももっと早く気づいてあげればよかった、もっと相談に乗ってあげればよかった、なんて思うことも多々あります。女性にとって、いざというときに相談できるフラームジャパンさんのような存在は、有難いと思います。
 
飯嶋:御社では、女性活躍やダイバーシティの観点から、どんな取り組みをされていますか?
 
菊池:ユーシービージャパンでは、「WiL」というプログラムを実施しています。「WiL」は「Women in Leadership」の略で、「女性」だけではなく、企業にとって最も大切な資産である人財が、「自分の成長の場としてのキャリア」について自ら考え、行動し、そして楽しむことを重点に置いています。私のこれまでのキャリアもそうでしたが、社員の成長と企業の成長は両輪だと考えています。そのためWiLは、参加メンバーが自主的に考えることを目的としており、私たちマネージメントがそれをサポートするという姿勢を基本にすることを、コンセプトに置いています。WiLはユーシービーのアメリカやイギリスでもアクティブに活動しています。私が日本法人の社長に就任してからは、日本も負けない位、積極的に活動を始めました。今では多くの社員が自らのキャリアについて考える機会を得られるようになってきています。また、ユーシービーはInclusionの考え方を重視しています。ユーシービーにいるすべての社員が、それぞれの経験や能力・考え方を認められ、活躍できる状態で働くこと。社員が自分らしく輝ける場を提供できるかどうかがInclusionの観点からは重要になってきます。そのためにも、社員が自ら自分のキャリアについて考える機会は欠かせないものです。

女性はご自分に課すハードルが高いことが多いです。
たとえ最高の結果が出せずとも「次に生かそう」という視点で前に進めると素敵ですね。

 

飯嶋:今、28歳頃の自分に何か声をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?
 
菊池:まずは「今では考えられないようなことが、これからたくさん起きるよ」と教えてあげたいです。語学学校で働いていた頃なんかは「自分は近いうちに結婚して仕事を辞めるだろうな」なんて考えていたんです。当時の自分が今の私を知ったら、きっとすごく驚くと思います。
 
飯嶋:もし当時の菊池さんがご想像される通り、専業主婦になっていたら、どんな人生を歩んでいらっしゃったんでしょうね!
 
菊池:きっとそれはそれで、主婦業に専念していたんじゃないかな(笑)何事に対しても一所懸命になることが、私の性分ですので。案外教育ママなんてなっていたかもしれませんね。
 
飯嶋:フラームジャパンには自分のキャリアに悩む女性が多く訪ねてきます。彼女たちの話を聞いていると、どうしてもネガティブ感情を持ったままそこから動けなくなってしまう方が多いように感じられます。そんな彼女たちにぜひ菊池さんからアドバイスをいただきたいです。
 
菊池:まず私自身は、「できないことがあって当たり前」というマインドでいるようにしています。今まで様々な仕事をしてきましたが、その中ではできないことが当然なケースも多くありました。それらにいちいちめげていると前に進めなくなってしまうんですよね。そういった、ひとつ割り切りのような感情を持つことも、マインドコントロールでは重要です。女性は特に自分が越えるべきだと考えるハードルが高いように思えます。ご自身に厳しすぎるんですよね。経験上、何かうまくいかないことがあっても「あ、今回は駄目だったんだな。よし、次は頑張ろう!」くらいの気持ちでいた方が結局結果も出やすいです。「次もできなかったらどうしよう」「このチャンスを逃したらどうしよう」と考えてしまう気持ちもわかりますが、結果なんて出てみないことにはどうしようもないんです。これは弊社の社員たちにも伝えていることですが、だからこそ、まずはあとのことを考えずにとにかくチャレンジをする。失敗したときのことは、そのとき考えればいいんです。
ご自分の可能性を自分で諦めず、「失敗しても次に頑張ろう!」という気持ちで、どんどん挑戦していってほしいですね。