女性MRコンサルのフラームジャパンのインタビューページ

INTERVIEW

インタビュー

製薬業界を牽引するエグゼクティブの方々。
これまでの貴重なキャリアヒストリーや、ダイバーシティ推進が描く未来について、
インタビュー形式でお話を伺いました。

ダイバーシティの実現へ
海外と日本で培ったリーダーシップで
チームを牽引する

executive interview

バクスター・ジャパン株式会社
代表取締役社長

グレン・ロバート・アーガイル
Glen Robert Argyle

※取材撮影日:2024年11月

インタビュイー人物画像
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PROFILE



ニュージーランド出身。大学卒業を機に来日。大阪にて中学校教師として3年間勤め、大日本製薬にて臨床開発、事業開発、製品戦略などに携わる。
その後、日本のベンチャーCROにて社員数 約130名まで拡大・成長することに貢献。インヴェンティブジャパンでは弊社飯島と一緒にCRO事業の立ち上げに従事。300名規模の会社に成長させる。
バイエル薬品においては事業開発部長・血友病領域統括部長・婦人科領域統括部長を歴任しアジアパシフィックのチーフスタッフとして活躍。2024年1月バクスター・ジャパン社長に就任。


【経歴】



・大日本製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社) https://www.sumitomo-pharma.co.jp/ 臨床開発、事業開発、製品戦略
・武田薬品工業株式会社 日本本社 https://www.takeda.com/ja-jp/
・インヴェンティブジャパン 事業部長
・バイエル薬品株式会社 https://www.pharma.bayer.jp/ja/ 事業開発、血友病域、婦人科領域
・バクスター・ジャパン株式会社 https://www.baxter.co.jp/ja 社長就任


※撮影当時:2024年11月

INTERVIEW

インタビュー

キャリアパスとリーダーシップの歩み

  

飯嶋:日本市場やグローバルでの経験を通じて、今の経営スタイルやビジョンにどのような影響があったと感じられますか?また、各段階でどのような視点で次のステップを選ばれましたか?
 
グレン:ニュージーランドで生まれ育ち、大学卒業時に来日しました。初めは、大阪の中学校で教師として3年間勤めました。その後、大日本製薬で7年間、医療関係の仕事に従事し、臨床開発や事業開発、製品戦略などに携わりました。その後、日本のベンチャーCROで1年半ほど大日本製薬時代の上司と共に励み、130名ほどの会社に育てました。それを経て、武田薬品の日本本社で初めての外国人社員として身を置き、7年間当時の社長と仕事を行い、その後インヴェンティブジャパンで飯嶋社長と一緒に日本のCRO事業の立ち上げを行いました。0からのスタートでしたが、おかげさまで従業員は300名ほどに拡大。女性リーダーも半数を超え、社員の女性比率も大幅に増加することができました。その後は、バイエル薬品で事業開発部長、血友病領域統括部長、婦人科領域統括部長を歴任しました。最終的には日本とアジアパシフィックのチーフスタッフとして仕事をし、2024年1月にバクスター・ジャパンの社長に就任しました。
バクスタージャパン株式会社 アーガイル・グレン 女性MR
飯嶋:素晴らしいご経歴ですね。他業界の経験をお持ちで、最終的にヘルスケアにコミットされましたが、社会的な意義を考える中で、特にこの業界を選んだ理由やその中で感じる充実感についてお聞かせいただけますか?
 
グレン:幼い頃から社会貢献したいという想いがあったのですが、どのようなことをすればいいのかが分からない自分がいました。そんな矢先、大日本製薬での仕事が私のキャリアの転機となりました。病気を患いながらも治療や手術ができない患者さんを臨床開発での新薬を通して助けることができました。これは私にとって大きなやりがいを感じた出来事で、そこから常に新しいことにも挑戦するようになりました。ヘルスケア業界の良い部分はそこにあります。常に新たな挑戦を与えてくれる環境があり、患者さんと自分自身のキャリアにおいて複合的にプラスに働くことが多い業界だと感じています。
 
飯嶋:日本のヘルスケア業界において、海外の方が企業でのポジションを獲得することは難易度の高いものだと思います。文化的な違いを踏まえた経営戦略の実践において、日本市場で感じた難しさや、それをどう克服されたかについて具体的なエピソードをお伺いできますでしょうか?
 
グレン:来日した当時、正直文化や価値観の差を最初に感じました。日々、日本語を勉強し、素直に新しい考え方・仕事のやり方を受け入れたからこそ、沢山の素晴らしい友達及び上司と出会いました。大日本製薬の時から、自分の努力を認めていただいた方々がいて、チャンスを掴むことができました。仕事で色々な国にいたことがありますが、自分に合う人、合わない人がいるのは変えられない事実としてあるので、年齢・性別・人種などで判断するのではなく、目の前の人との対話を重要視することは大事です。
 
飯嶋:前職では、私が採用チームのリーダー、グレンさんが新規CRO事業の立ち上げを指揮され、私は事業部のパートナーという立ち位置でした。共に挑戦の多い「何百名の採用」というプロジェクトに取り組んだ経験があります。当時の困難を共に乗り越えたあの時のことは私にとっても忘れられない経験です。業界の採用常識からいっても、かなり無理難題の目標人数でしたので、当時の採用トレンドをおさえたストラクチャーはかなり綿密に戦略をたてたのですが、やっぱり目標が目標だけに採用手法だけで完璧にするのは難しい。それを最終的に達成できたのは、グレンさんの「人を公平に見る力」が大きな役割を果たしていたと感じています。リーダーシップには様々なスタイルがありますが、グレンさんの場合は単に強力に牽引するだけでなく、チーム全員を公平に見渡し、その個々の力を最大限に引き出すことができる方だと実感しました。毎月毎月採用した方がそれに加わり、グレンさんが中心となってまとまっていく姿を見るのは、私にとってもそれまでにない経験でした。このリーダーシップはどこから培われたものでしょうか?その背景について、ぜひお聞かせいただけますでしょうか。
 
グレン:私は、今まで非常に恵まれた環境だったと感じています。もちろんニュージーランドで生まれ育ったことで、基本的な考え方を身につける事はできましたが、より考え方が洗練されたのは来日後です。日本に来た後にたくさんの日本のリーダーとお会いし、そこでチャンスを与えていただきました。はじめに大日本製薬に入社した際は、社長、会社のリーダーは何事も完璧にできる人だと思っていました。しかし、そこで「完璧なリーダーはいない」と教わりました。リーダーは、いかに周りの人を巻き込んで会社を良くする人であるか、という考えを学びました。すごく腑に落ちて、非常に良い経験をさせてもらえたと思っています。転職をし、会社を移っても、組織の中にリーダーは必ず存在していて、その中で飯嶋さんも私にとってとても重要な人物だったことを覚えています。私は来日した時に、日本企業に対する勝手なイメージとして男女平等の考え方が当たり前に浸透していると思っていました。しかし、実際はそうではなかった。そこで飯嶋さんと同じ目標に向かって歩むことができたので、良い結果がついてきたのかなと感じています。
 
飯嶋:私はグレンさんから考え方をたくさん学ばせていただきました。人それぞれの個性を見て、チームビルディングしていく姿はとても勉強になりました。
目標を達成する力があることは大前提の元、人を巻き込む力はすごくあると思いますし、これから日本もD&Iを促進していく上でその考え方はますます重要なものになると思っています。
 
グレン:ありがとうございます。まさに目標を設定することは最重要です。武田薬品に入社した時、日本国内の女性マネージャーはほとんどいませんでした。その時も目標設定は大事にしており、全てを数値化しました。今の武田薬品はグローバル企業に拡大していますが、当時はまだ伝統的な男女の役割を大事にしすぎている部分があり、女性マネージャーを育成する際も、そもそも候補者がいないという考え方が染み付いていました。数値化してからは、少しずつ女性リーダーにチャンスを与えるようになり、徐々に環境が変わりました。ダイバーシティに関しては会社のTOPから、自ら行動しない限り実現はできません。その点で自分に弱い部分があるのであれば、その分野に強いリーダーを集めるべきだと思います。これからますます日本のダイバーシティが進展するように期待しています。
 
バクスタージャパン株式会社 アーガイル・グレン 女性MR

意思決定とリーダーシップスタイル

 
飯嶋:グレンさんご自身がリーダーという立場にいるなかで、大切にしている価値観はどのようなものでしょうか?
 
グレン:私は誠実さを大事にしています。人の命を預かっていることから、誠実に向き合っていくことを意識しています。しっかりと目標設定を行い、共有し、どのように実現していくかを提示します。また、成功したか失敗したかの部分まで透明性を持って共有する事も重要だと考えています。そしてできていなかった部分は皆で学び合えるので、イノベーションを起こすことができます。私のリーダーシップ理論は、このように現状と目指すべき方向性を提示し、皆で向かっていく状態を作ることを意識しています。
飯嶋:バクスター・ジャパンの代表にご就任されて、まもなく1年が経つと思います。今後バクスター・ジャパンではどのような企業文化を作っていく予定でしょうか?
 
グレン:バクスター・ジャパンは、米国に本社を置くグローバル企業バクスターインターナショナルの子会社です。そして、さらなる成長を目指し、最近多くの新メンバーを迎えました。バクスターは歴史のある会社ではありますが、新規メンバーが多いことからイノベーション、ダイバーシティと挑戦を大事にする企業風土を持っています。経営会議でも単なる報告の場ではなく、ディスカッションできる場も作っています。その中で皆さんが、自分のやっていることを情報共有し、イノベーションが早い会社を作りたいです。また、会社の中で自分の意見を伝えられる環境を作り、人の争いではなく、積極的な意見交換ができるようなアクティブな会社にしていきたいです。TOPだけでなく、全ての人が自分の考えを発信し、それが実現かつ会社にとって良いものであれば積極的に取り入れていきたいと思います。イノベーションは会社の原動力になるため、今後も活かしていきたいと思います。
 
飯嶋:社長だから通すではなく、会社にとって良いことだから意見を反映するということはすごくいいことですよね。先ほど、バクスター・ジャパンはイノベーションが大事とおっしゃっていましたが、このD & Iの役割に対して、どのような考えを持っていますか?
 
グレン:D&Iからイノベーションが生まれてくる。皆が同じ考えを持っていると、新しいことを生み出せない企業になってしまいます。違う考えのメンバーがチームになることでイノベーションが生まれてくるので、それは性格の部分、または男女の差もあるし、場合によっては文化の差、年齢など、様々な考え方があります。メガネのレンズを変えれば世界も変わる、というように色々と見方や考え方も変わります。そういった部分をチームメンバーの違うレンズ、そして違う色の世界に引っ張ることでイノベーションが生まれると思います。
 
飯嶋:では、チームメンバーにとっては今、社内が安心安全な環境に変わってきて、これから次のステップという段階ですか?
 
グレン:女性の割合は、管理部門では50%を超えていますが、営業部門の女性比率は、まだまだ上げていく必要性を感じています。女性管理職については、日本政府が女性役員の比率を2030年までに30%以上とすることを目指していますので、私たちはそれよりも早いタイミングでの達成を目指しています。
 

女性MRについて

 
飯嶋:女性(特にMR)はまだまだ少数派ですね。
でも少数派だけど成績としてはいい成績を出しているということでしょうか?
 
グレン:とてもいい成績で、TOPの成績を出していたり、前職の経験を活かしているような活躍もみています。
これからどんどん育て上げたい人材です。
 
飯嶋:今後、女性人材の獲得や育成はどのように考えていますか?
 
 
 
 
フラームジャパン 飯嶋真美 女性MR
グレン:バクスターは、1人1人を育てるという部分を非常に重要視している良い環境だと思っています。営業部隊全体として、3ヶ月ごとにメンバー全員の教育制度を見直し、今後の女性リーダーをどのように育てていくかを見直しています。現時点で女性リーダーの数は十分とは言えないため、彼女たちの成長を見守りながら、更なる女性リーダーの育成に取り組んでいます。 もちろん、それぞれに自分の目指したい道があるので全ての女性に対し、自分がどんな道を歩みたいのかを本人と相談します。男性は未経験でも上を目指したい方が多い反面、女性は経験の無さを懸念する場合が多いと感じます。実際は経験の有無ではなく、最初はやりながら覚えていけばいいと伝えています。また、なりたい自分になれる環境が今の会社にないから、やむを得ず退職するという人材が存在しないような環境作りは、会社側で考えなければいけないと思っています。一人一人の人生のステップ、そして生き方に合う制度を作らなければ女性人材が集まらない状態ができてしまうので、気をつけなければならないと思っています。
 
飯嶋:会社として女性MRはまだ少数派とおっしゃっていましたが、彼女たちをエンパワーメントするための制度や会社として今後行っていく取り組みはどのようにお考えでしょうか?少数派である女性MRのモチベーション維持ではどのような考えを持っていますか?
 
グレン:キャリアは会社が作るものではなく、一人一人が考えるものです。女性メンバーと話をしますが、人生設計においての時間的な制約もあり、制度をどう変えても難しい状態は現実としてあります。その中で制度自体をより平等になるよう変更しました。女性が自分で決める、女性が自分でやるのであり、耐えるものではない。チャンスを与えることはもちろん、メンターを与えることもします。またフラームジャパンさんのように外部の方からの知見もお借りしながら、社員一人一人に刺激を与えていく必要があると思っています。
 
飯嶋:これからのヘルスケア業界の未来を担う人材に何かアドバイスはありますか?
 
グレン:私が若い時に持ちたかった考え方が、「将来なりたい姿は何か1つに限定する必要はない」という認識です。自分のキャリアパスも3つくらい選んで、そのスキルを磨くと良いと思っていますが、もしかしたらその中の1つがAIの発展で必要なくなるかもしれないということも考え、自己スキルは高めなければならないと思います。方向性だけ決めてしまい、周囲の上司や尊敬している方にそれを話すことが重要です。そうすることで重要なアドバイスを受けるだけではなく、何か具体的なチャンスをもらう可能性も秘めています。会社も人間で成り立っているので、自分の実現したいことを伝えることが、理想のキャリア形成につながると思います。
バクスタージャパン株式会社 アーガイル・グレン 飯嶋真美 女性MR

フラームジャパン

 
飯嶋:グレンさんと10年前ほど前に前の会社で一緒に仕事をし、その後、私はフラームジャパンを立ち上げましたが、フラームジャパンはグレンさんから見てどのような会社ですか?
 
グレン:フラームジャパンは、会社と従業員の双方で、男女の差の部分をより克服できるか等を考慮しつつ、個々の人生で行動するタイミングがある中で、きちんとそれを認めて仕事ができる環境を提供しています。
 

飯嶋:一緒に仕事をしていたときは、まだ自分が起業をするというビジョンはなかったのですが、目指すべき方向性はグレンさんと同じ方向を向いていた気がします。

グレン:以前から、女性にチャンスを与えたいという気持ちを持っていたように見えます。私も当時、女性にチャンスを与えたいという気持ちが強かったこともあり、同じ志でお仕事させていただいたことを覚えています。
 
飯嶋:フラームジャパンで展開する事業はすべて「ダイバーシティを持った組織づくり」という私たちのビジョンを実現するために取り組んでいる事業です。グレンさんには以前からそのビジョンをご理解いただいており、今後も共に歩んでいけることを楽しみにしています。
 
グレン:我々の弱みの克服方法を相談しながら、研修や人材が集まってくるフローの形成などに活かしたいと思います。また、経験のあるメンバーにアドバイスをもらえる点も良いなと思います。本社の機能としてはリーダーシップの考え方は浸透しつつありますが、セールスにおいてはまだまだ強化していきたいと思っています。
 
飯嶋:そうですね。女性にとってメンターってとても大事です。例えば、定年退職する女性MRをほぼ見かけませんよね。ということは、女性は定年までの道筋が見えない。そのメンターによって自分のアウトプットが形になれば彼女たちのモチベーションに繋がると思っています。
 
グレン:ぜひ今後も社外研修の部分に活かしたいなと思います。我々はまだメンバーが少ないこともあり、そこの部分で携わっていただけることはとても心強いです。私のこれまでの経験の中では女性メンバーが全体の20%くらいまでいかないと、ダイバーシティを尊重するための継続的な組織構築ができません。