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My Story
外資系製薬メーカー コマーシャルエクセレンス本部
シニアマネージャー (※撮影当時 2023年2月)
〆木由香さん
Yuka Shimeki
PROFILE
私は、「〆木さんだからできた」ではなく「〆木さんだってできたから私にもできる」と思ってもらえるような、ロールモデルになりたいと思っています。
今回のMy storyは特別編として、
女性MRがまだ少ない時代からキャリアを歩み始め、営業所長、社内で女性初の支店長も務められた〆木由香さんを2回に渡りご紹介します。
管理職へのステップアップの際には葛藤もあったと語る〆木さん。ライフイベントも含め様々なキャリアの転換点でどのように考え、行動をしてきたのか。彼女のストーリーは女性MRが長期的な視点で今後のキャリアを描くためのたくさんのヒントを与えてくれました。
INTERVIEW
インタビュー
キャリアはシースルーのエレベーター 新たな景色を見ながら女性MRはもっと成長できる【Part2】
その後産休・育休を取得された〆木さんですが、ライフイベントを迎えるにあたって、不安になったり、大変だったりしたことはありましたか?またそれをどのように解決したのでしょうか?
そもそもライフイベントを迎える前に、まずは子供を授かることと仕事との両立をどう考えるか、自分の中で折り合いをつけるのが大変でした。私が管理職になる前は女性営業管理職がいなかったため、管理職になる前に子供ができたら管理職にはなれないかもしれない、でも管理職を先にしたら高齢になり子供が授かれないかもしれない、その狭間で苦しい思いをしました。女性キャリアの中で昇格のタイミングが後になればなるほど、私と同じような思いをする人も増えてしまうと思うんですよね。
一番理想的なのは、管理職を希望する女性に関しては、20代後半からも30代あたりで早めに管理職に挑戦して、数年管理職の経験を積んでみることが良いのではないかと思います。そこで実力をつけからライフイベントを迎えるのであれば年齢の悩みは減るのではないかと思います。
私は子どもを授かってから、つわりがひどくて妊娠2~5か月の時に休職しました。妊婦としては高齢のため流産のリスクが非常に高く、妊娠による休職は直属の上司以外には言わないように主治医から言われていたので、支店長という立場でありながら周囲に多大なご迷惑と心配をかけてしまった形になりました。上司にすべてを委任し、復職してからはメンバーに全てを正直に話して理解を得られるよう努力をしました。
〆木さんは女性MRをめぐる環境が大きく変わる中で、キャリアを切り開いてこられました。これからの時代の女性MRが歩む道は〆木さんが歩んでこられた道とは異なる部分もあると思いますが、彼女たちが前向きにキャリアを歩んでいくにあたって、どんなことを身に付けていってほしいと思いますか?
誰のために、何のために仕事をするのか、そこにはどんなバリューがあって、どう社会貢献をしていこうと思っているのか、仕事の意義を感じながら仕事をすることだと思います。
その際、『自分』と『サービスの受け手であるクライアント』と『自分の勤めている会社』これらそれぞれにどうバリューを自分は発揮できるのかを意識できるとバランスが取れると思います。利己的な動機だけで仕事をすると視野が狭まると感じています。
MRは医療に携わる仕事なので「自分の仕事は患者さんの未来に貢献するためにあるんだ」と病気に苦しむ患者さんのことを必ず仕事の中心に置くことも大事に欲しいと思います。
そういったマインドを持った上で、再現性をもって発揮できるビジネススキルを意識的に習得してほしいですし、キャリアで躊躇することがあったら、より積極的でポジティブな方にチャレンジしてほしいと思います。たとえ失敗することがあっても、失敗は自分だけの責任ではなく、育成する立場の上司にも責任はあるので自分だけを責める必要もありません。ただ、だからこそ上司や周囲の人たちが「この人は育成したい」と思えるような、主体的な行動が求められると思います。
まだ女性管理職はロールモデルも少なく、管理職になることに不安や抵抗を感じる女性MRも多いです。管理職手前でキャリアに悩んでいる女性MRの方がいたら、〆木さんならなんと声をかけますか?
まずその人がどんなことで悩んでいるのか、深堀りしながら話を聞きたいと思います。どんな悩みを聞いたとしても共感できるものばかりだと思うので、その悩みを心の底から受け止めたいと思います。そしてご本人の意見を引き出し、それに全面的に応援する形でアドバイスをしたいと思います。
管理職になることを不安に感じている場合には、キャリアはシースルーのエレベーターのようなもの、とお伝えしたいです。低層にいると遠くまで見渡せないけど、上に行くにしたがって見える景色が違ってくる。遠くまで見渡せると、何のために仕事をするのか、感じ方も変わってくる。だから、今は見えないやりがいや面白さがあると伝えたいですし、裁量も増える分、今感じている不安は対処できる範囲内である可能性が高いという点も視点やマインドが変わる上で大切だと感じています。
また、ご自身の働く根本的な価値観に立ち返って考えてほしい、とも思います。自分が働く動機が何なのか、どういう価値観や想いを大切にしたいのか、それをしっかり自己認識することが大切です。その価値観や想いに沿って仕事ができていれば、つらい出来事があってもそれ以上のやりがいや充足感を感じられるはず。自分の仕事に対する大切にしたい価値観や想いは犠牲にはしないでほしいです。
現在日本は、女性活躍に関しては過渡期にあり、「妻」「母」であってもキャリアアップをしていくことが当たり前になっていくと思います。〆木さんからみて10年後、20年後どのような環境になっていってほしいと思いますか?また、その時代に女性MRにはどのような努力や学びが必要でしょうか?
月並みですが、10年後、20年後には、結婚をしても子供を産んでもライフイベントがキャリアを積極的に推進できない理由にならない社会になっていてほしいです。
だからといって、女性に結婚や出産の経験がないと幸せではないというような固定概念からも解放されて、男女問わずその人の大切にしたい価値観や想いに沿って仕事ができる環境であってほしいと思います。
育児も家事も仕事もチームでするもの。育児や家事が家族だけで完結しない、もっと多くのステークホルダーとともに行うのが当たり前になることが必要だと思います。行政にはこういう制度つくりや費用負担を考えて頂けるとありがたいと思います。
仕事に復帰した当時は葛藤もありました。しかし、振り返ってみれば、保育園の先生からいろいろ育児のノウハウを教えてもらえたので、すごくよかったと思っています。今お世話になっているシルバー人材センターの女性は昔デザインのお仕事の経験があり、息子にお絵描きを教えてくれています。
育児のノウハウを知っている方、次世代に貢献したいと思っている方って、他にもたくさんいるのではないかと思っています。そこを有機的にうまく繋げる社会の仕組みがあるといいなと思います。
女性MRに必要な学びについては、あくまで私見ですが、これからの時代に医療がどのような変化をしているかを想定し、そこにどう貢献できるかを考えた上で見えてくると思います。
AIが発達すると、医師よりAIの方が正確にできることも増えると思いますが、その中で人のバリューは何なのか。私は、対話を通して相手の頭が整理されてアイディアが浮かんできたり、気持ちや考えに共感し寄り添ったり、そういう場面にあるのではないかと思っています。
そのためにも医師目線で治療に関する専門的な対話ができることがMRとして重要であると思います。情報提供という形にとどまらず、先生の治療戦略の壁打ち相手のような存在として信頼していただくイメージです。
だからこそ患者さんや医療に貢献したいマインドと自己研鑽は絶対に必要だと感じています。自社製品に関することはもちろん、自社製品以外でも最新の医療技術や疾患知識に精通する必要があると思います。
今後ご自身が育成された女性MRの方たちが管理職へのステップを上がっていくことになると思いますが、彼女たちを支える周りの環境に対してどのようになっていってほしいと思いますか?また、ステップを上がる女性自身へのメッセージもお願いします。
女性を管理職ポジションに引き上げて終わりではなく、引き上げた後にちゃんとリーダーシップが発揮できるよう育成すること、組織として支援する体制が必要だと思います。仕組みができれば、男女問わず新リーダーに対して同じように人材育成ができるため、組織にとってもメリットになるはずです。
こういうことを言うと、男性管理職からは「自分のときは指導されなかった」という反発があったり、「自分から聞きにこないと教えない」というスタンスの方もいらっしゃると思いますが、どうしてもそういう環境だとマイノリティの女性管理職では潰されてしまうことが多いように感じています。
男性管理職の方自身も、非常に努力をされて今のポジションに就かれていると思います。その努力をしっかりと認めた上で、持っていらっしゃるスキルや実力を余すことなく後進に引き継いでもらうことで、諸先輩方と同じような優秀な管理職が社内に増えていく、それは会社にとっての人財という財産を増やすことになるし、諸先輩方ご自身の組織の中でのバリューや存在感も上がることに繋がるのではないですか、と伝えてみたいと思います。管理職を育成することに対して、彼らの視点に選択肢が増えるといいなと願っています。
また、女性管理職の部下の立場ですと、
何で自分よりも仕事の経験値の少ない女性が自分の上司なのかと受け止められない思いを感じる人もいると思います。
そういう方には、役職に就くことが優劣の話だけではないことを理解していただけるとよいのではないでしょうか。その女性は管理職という役割を与えられているだけ、あなたの役割は、その女性が管理職として組織運営ができるようしっかりサポートすることにあり、その責任をしっかり果たせたか、があなたの評価につながる、という点をお伝えしたいと思います。そこでしっかり責任を果たせば、会社もあなたにもっと大きな責任を任せたいと思うようになるはずです。
そして、ステップを上がった女性に対しては、自分と自分のメンバーを信じ切ってほしいと思います。支えてくれる人は必ずいるはず。躊躇せず、自分から周囲のサポートを積極的に取りに行ってください。
ありがたい出来事や人に対しても、つらい出来事や人に対しても、感謝の気持ちを持ち、何事も一人では抱えこまないことが大事だと思います。
そして自分に対して、仕事に対して、組織運営に対して、ビジョンや方針を明確にする。覚悟を決めたら、なりふり気にせず一生懸命やってみる。そんな姿にチームメンバーも一緒にやっていきたいとついてきてくれるはずです。
私は、「〆木さんだから管理職になれた」ではなく、「〆木さんができたんだから私もできる!」と思ってもらえるようなロールモデルになりたいと思っています。「私ができたんだからあなたもできるわよ!」とどんどんお尻を叩くみたいな(笑)。
また「私は16年かかって管理職になれたんだよ」という話もよくします。「私の時は前例もなかったし16年かかったけれど、あなたたちは私と同じように16年かけるのではなく、もっと前倒しできると思うよ」と。私みたいなロールモデルを見て、もっと早くステップアップすることができれば、私が使えなかった分の時間をあなたたちはもっと有意義なことに使える。そうすることで組織の発展にもなるし、あなたたち自身は支店長ではなく、もっともっと成長ができるんだよ!というメッセージはこれからも伝えていきたいと思います。
〆木さんは製薬業界において価値ある人材を育成するために、どのような取り組みをやっていきたいとお考えですか。
私の夢のひとつとして、多様性推進、特に女性活躍推進のコンサルティングができればと思っています。私がキャリアをスタートさせた時代と比べると、とても女性MRが増えた製薬業界。これからは女性管理職も当たり前になってくるのではないかと思っています。そういう環境にて、女性管理職が少しでも増えるお手伝いができたらとても幸せだと思います。
そして、フラームジャパン社でも、タレントデベロップメント、女性管理職育成のプログラムを提供されていますので、将来的に、私のこれまでの経験や営業現場で培ってきたスキルが活かせる場面もあると嬉しく思っております。
また、私はプロコーチのライセンスも取得しており、副業でコーチングを行っています。私自身も支店長を拝命した時に、「女性支店長としてリーダーシップをとっていくためには」というテーマでエグゼクティブコーチングを受けたのがコーチングとの出会いです。コーチとの対話の中で、少しずつ自分でアクションを決め実行していくことで、徐々にリーダーシップが取れるようになり、成果を出すことにもつながりました。
そこから、私自身もクライアントのより良い人生に貢献したいと思い、プロコーチのライセンスを取得しました。今は主にキャリアに悩む人に対して1on1でコーチングをすることで、より良いキャリアの実現に向けて支援しています。
管理職への昇進を前にした女性の不安な気持ちや迷いは痛いほどわかります。フラームジャパン社の女性管理職育成のプログラムに加えて、このようなコーチングを活用することで、管理職一歩手前の女性のマインド面、行動変容をより後押しできるのではと思います。
より多くの女性MR、女性管理職が活き活きと活躍できる未来に向け、製薬業界、ヘルスケア業界を一緒に盛り上げていけたら、と思います。