女性MRコンサルのフラームジャパンのインタビューページ

INTERVIEW

インタビュー

製薬業界を牽引するエグゼクティブの方々。
これまでの貴重なキャリアヒストリーや、ダイバーシティ推進が描く未来について、
インタビュー形式でお話を伺いました。

多様な視点を取り込み、
見えない未来を創り出す
チャレンジャー。

executive interview

ロート製薬株式会社 代表取締役会長

山田 邦雄

Kunio Yamada

インタビュイー人物画像
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メンソレータムやオバジ、エピステームなどの
スキンケア商品を展開し、女性にとって
欠かすことのできない企業へと成長を遂げた
ロート製薬を率いる代表取締役会長・山田邦雄氏。
そしてヘルスケア業界で唯一の
「女性活躍の推進・コンサルティング企業」である
フラームジャパンの代表取締役社長・飯嶋真美。
「女性の悩み」に向き合い、ロート製薬を
女性の健康に不可欠な企業へと成長させた山田会長と、
「ヘルスケア業界の女性活躍第一人者」とも呼ばれる
飯嶋との貴重な対談。

INTERVIEW

インタビュー

ロート製薬の多様性への積極的なチャレンジが
新しい価値を創造する。

 

時代とともに変化する社会。

ロート製薬のチャレンジ精神があってこそ、
その変わりゆく価値観を新しいライフスタイルとして提供できるんです。

 

飯嶋:山田さんは事業の拡大と社会貢献性の両立という難しいことをされているかと思います。「この分野からこの分野までがロート製薬の分野だ」という区切りもなく、実は、アメーバのような経営をされているな、と思って見ていたのですが、企業や組織に対するお考えを教えていただけますか?

 

山田:ロート製薬が境界なく様々な分野に挑戦できるのは、ひとつとして、会社の「歴史」によるところもあると思います。
私の先々代、つまり祖父はユニークな人で、私財を投じてスイミングクラブを発足、水泳選手を育ててオリンピックに送り出すなどもしていました。そういった様子を見ていたので、事業はもちろんとして、社会貢献も素晴らしいことなのだ、という想いが強くありましたね。企業としては当然利益も出していかないといけないわけですが、それだけじゃ面白くないというか。もはやこれはロート製薬の経営陣に刻まれたDNAなんだと思います。

もうひとつとして、特にここ10年20年は特に日本の社会問題が表面化してきたことも大きいですね。私たちが若いころは「明日は今日よりよくなる」という希望が持てましたが、ここ最近の若い人たちは「明日は本当に今日よりよくなるのか?」という不安もあるかと思います。 そんな社会でもロート製薬にできることはしていきたいと思っています。事業との両立は時として難しく感じられることもありますが、それでも「両立させるためにはどうしたらよいか?」ということを常々考えています。

飯嶋:ロート製薬は一般消費者へ向けた商品が多いかと思いますが、人口が減少傾向にあるにもかかわらず業績は右肩上がりでいらっしゃいますよね。 私としては、これは「人の生命力を上げる」というロート製薬の商品へのこだわりが、そのまま企業体制にも反映されている結果なのだと思っています。 これについてはいかがですか?

 

山田:そうですね。他に重要な点としては、同じことをし続けない、ということもあります。目薬事業ではおかげ様でトップシェアを長年継続できていますが、ずっと同じようなことをし続けていては、マーケットはいずれ停滞してしまう。そうならないようにロート製薬らしい規模で、知恵と工夫を凝らしながら伸ばしていくことが必要です。それだけではなく、例えばここ20年は化粧品事業にも進出しました。まったくの0からのスタートではあったものの、そこはロート製薬らしいチャレンジ精神で挑み、オバジやエピステームのようなヒット商品を生み出してきました。海外、特にアジアでの事業展開も他社に比べて早いうちから始めました。日本のマーケットでブラッシュアップされた商品はアジアでも人気が高く、日本のマーケットでの経験も非常に生きていますね。ロート製薬には常に前向きなチャレンジャーが多いので、そこは特に恵まれているかもしれません。

 

飯嶋:そうなると社内複業なども、変化に対応する目的で?

 

山田:そうですね。まさしく「時代の変化」に対応できるようにするためです。今の時代、企業さえも変わってきています。本業はもちろんあるものの、その本業がどうなるかは誰にもわからない。時代が変われば求められるもの、価値も変わってゆきます。そうなれば本業にこだわらず、それを生かし新たな分野で挑戦していくことも不可欠です。常に変化し続け、求められる価値観に対応していく力が必要になります。 その点、飯嶋社長のフラームジャパンがなさっている、ヘルスケア業界での女性活躍推進事業も、まさしく時代の流れを汲んだ「新しい事業」だと思いますね。女性が市場の大部分を作るヘルスケア業界では、女性の視点はとても貴重ですから。

 

飯嶋:そうなると、ロート製薬で働いている人はどんな傾向のある方なのか、その「特徴」も気になります。

 

山田:製薬業界も化粧品業界も、他業界と比べると比較的安定している面もあると思いますが、ロート製薬の社風としてはチャレンジ精神も豊富ですから、そこに加えチャレンジャー気質も併せ持った人が多いと思います。私としては社内ベンチャーなんかもどんどん立ち上げていけたらいいなと思っています。 ただ製薬も化粧品も工業的手法で行われる事業ですから、コンプライアンスに基づき、組織として研究・開発を進めていくことも重要です。 「組織で問題を解決する」という意識をベースに新しいことに挑戦をしていく。これは会社としても目指していることですし、そういったマインドを持っている人がロートに集まってくれている、と感じます。

サステイナブルな社会の実現には、外国籍の方の力が不可欠。
マルチな文化に対応できてこそ、多様性ある社会の持続が可能になります。

 

飯嶋:社内に外国籍の方もいらっしゃるんですよね。

 

山田:今や日本人だけでサステイナブルな社会を回していくのは難しくなってきています。コンビニでも地方のホテルでも外国籍の方は多く見かけるようになり、もはや彼らも日本経済を支える一員で、お互いにとって共生は不可欠なものになっています。今はインバウンドのお客様も多くなっていて、「彼らにも満足してもらう」ということを考えると、日本国外の方が日本に来て、暮らして、働いて、そして研究や商品の開発を担うということも必要になってくるんですよね。日本のポテンシャルは、まあ落ちてきているとは言っても世界有数であることは紛れもない事実ですが、それでもマルチな文化に対応できるようにならなければ、多様性に対応できるサステイナブルな社会は作り得ません。そのためロート製薬では外国籍の方を歓迎し、日本に来て日本に住んでもらい日本で働いてもらう、という取り組みを積極的に進めています。

飯嶋:海外から日本に来られて働かれている方について、感じられることはありますか。

 

山田:海外から日本に来る方はやはりそれなりに覚悟と意志を持っている方が多いですね。目的意識を持って日本にいらして、「コレをするために今日がある」という強い思いで仕事をされる方がほとんどです。それは単なる上昇志向ともまた違っていて、「自分が目指す明日のために今日がある」という明確な目標があるからこそ仕事の質も高いです。また、日本に来られる方のほとんどは日本を好いてくださってはいるものの、永住するかというとそんなことはなく、時間が限られている方も多くいらっしゃいます。だからこそ彼らにとっては1年1年が貴重で、時間を大切にしている分成果も出す。そこは彼らのエネルギーのひとつだと思っています。

企業ごとに「正解」は異なる。
女性の活躍はロート製薬の成長の鍵だった。

 

「グローバルスタンダード化」は常に「正解」なのか?重要なのはそれぞれの企業にあった成長を続けることです。

 

飯嶋:海外から見ると日本は「グローバルスタンダード化が遅れている」という話は聞きますが、海外へも進出されている山田さんにとって、感じられるところはありますか。

 

山田:ヘルスケア業界でも、多くの外資系企業が日本で活躍しています。おそらく皆さんが思い浮かべる身近なグローバル化は、世界で活躍するこういった外資系企業ではないでしょうか。
外資系企業は、日本を始め海外に進出することを、ひとつ経営目標に掲げているところもあります。しかし、その考え方や戦略がすべてではないと私は考えます。例えばベトナムやタイ、インドネシアのような国々にある企業は外国へ進出せず、国内に根付いた経営をしていることがほとんどです。世界の多くの国にある企業はいわゆる「グローバル」ではなく、世界ではそちらの方が普通と言えます。アメリカなどの大手外資企業は世界へ進出することも多く、それに比べると「日本は全然海外を意識していないじゃないか」と思ってしまいがちですが、果たして「違うこと」とはすなわち「悪いこと」になるのか。

それぞれの企業にあった成長の仕方や体質があり、それに反した目標を掲げれば企業は崩壊しかねません。周りに「合わせすぎる」ことはいいことばかりでもないのです。 ただ、「国境の壁」が低くなってきていることは受け止めるべき事実だと考えています。 お金についてはとうの昔に世界中を動き回っていますが、特にここ最近、ヒトの行き来の敷居は格段に低くなりました。とは言っても「ヒトの行き来が盛んになる=世界が均質になる」ではないですから、やはり「すべてが同じになればいい」というのは必ずしも正しいとは言い切れないわけです。

今やロート製薬のトップ事業となった化粧品事業。
女性の働きやすい企業文化が成長の鍵でした。

 

飯嶋:化粧品事業を立ち上げられたときは、山田さんがご発案されたのですか。

 

山田:ロート製薬の化粧品事業はある日突然始まったものではないんですよ。もともとメンソレータムブランドなどスキンケア製品は扱っていましたから、それが発端になりました。はじめはリップクリーム、次いで日焼け止め、洗顔料やクレンジングと続いていく中で、「もっと女性の美に直接近い分野に」という想いも高まっていきました。そうこうしている間に、気づけば化粧品分野が大きく成長していたという次第です。

 

飯嶋:それは山田さんが社長になられて何年目ごろのことでしょうか。

 

山田:スキンケア製品自体は私が社長になる前からありました。ただ「この分野はより成長が見込めるのではないか」と気づき、力を注ぐようになったのは私がちょうど社長になったころでしょうか。

 

飯嶋:化粧品事業となると、今までの市場とは違う対女性市場に参入することになり、コンシューマーの層も大きく変わったことかと思います。その中で社内に動きなどはありましたか。

 

山田:化粧品の世界は基本的に女性がメインですから、「自分事」として化粧品を捉えられる女性人材の重要性は高まりました。採用人材としても6:4で女性の比率が多くなっています。副次的ではありますが、女性には仕事熱心な方も多いため、大変貴重な人材として活躍してくれています。

 

飯嶋:化粧品事業立ち上げ当時は男性の方が多かったんでしょうか。

 

山田:工場ラインの方はもともと女性社員が多かったので、工場を含め全社的見れば、女性の比率はそこそこありました。ただ、営業や広告となると男性の方が圧倒的に多かったですね。

 

飯嶋:その中に女性が入ってきて、根付くまではどのような流れでしたか。

 

山田:ある日急に女性が活躍し始めたかというとそうじゃないですね。当時は工場ライン以外でも、薬剤師や研究員としてロート製薬に勤めている女性は多くいらっしゃいました。まずはそれら工場や薬剤師・研究職から、女性が結婚・出産後も含め働きやすい環境づくりを始め、総合職採用が世間で叫ばれ出したころから、営業やマーケなどの女性採用も加速していきました。

 

飯嶋:女性社員は優秀だとおっしゃられていますが、もしご自分が女性に生まれていたら、どんな人生だったと思われますか。
私は、女性活躍推進の会社を経営しているので、企業トップの男性の方から見たら、どうなのか皆さんに聞きたいな、と思っているんです。

 

山田:少なくとも主婦は私には向いていないと思います(笑)仕事は続けているでしょうね。

社会の変化の中で、個人の幸せ、健康は
個人に委ねられている。

 

人口減少による労働者の減少……。 重要なのは「機能する人材」を育成し、労働者もまた自ら「機能する人材」へと成長することです。

 

飯嶋:一方で人口減少は社会問題になっていますね。

 

山田:確かに日本だけで見れば人口は減っていますが、世界的に見ればまだまだ人口は増えています。ただ、日本に外国の方を迎え入れることで日本の人口を増やすのか?という意味では難しいですね。それでも間に合わないほど少子化・人口減少が進行する可能性もあります。私としては、人口が減ってしまうなら減ってしまうで、それなりの面白さがあると思いますけどね。人口が増え続けたころのやり方で事業をしていれば、マーケットは当然小さくなりますが、時代の価値観に即して、つまり人口減少時代の考え方に合うよう工夫して展開すればいいわけです。

 

飯嶋:そうなると高齢化が進む今、すでにロート製薬はそれを見据えて動かれてきたと思いますが、今後さらに「人生100年時代」を迎えるにあたって、新たなライフスタイルを国民に提供する役割を担っていくことになりますよね。

 

山田:私は、人間出来るだけ長い時間を元気に楽しめたら、それが一番幸せだと思っています。一度きりの人生、ハッピーで楽しく長寿なのは、誰が見てもよいゴールですよね。問題は、ハッピーで健康で、さらに社会を支えられるように年を取るにはどうしたらよいか?という点になります。話が戻りますが、日本の人口が減少している今、一人一人の役割はさらに大きくなっています。そういう意味では、社内複業もそれぞれの社員のポテンシャルを生かすために重要なものです。 社会ではどこも「人材不足だ」という問題を抱えています。頭数の問題ではなく「機能する人材」が必要になっているためです。このような少子高齢・人口減少時代でもいろいろな場で活躍するマルチな人材を育成するためにも、社内複業はひとつの手段になっています。

 

飯嶋:定年が60、寿命が85くらいだとすると、定年後20年以上時間がありますよね。 そこに国は関与しておらず、個人の裁量に任されている部分が多いように感じます。

 

山田:私は個人の幸せと個人の健康は、その人個人に委ねられていると思っています。「誰も何もしてくれない」「助けてくれない」ではなく、自助努力もこれから先は重要になりますよね。

医療の発達は、イコール健康寿命の延長というわけではないので、医療のお世話にならない、
元気でいられる時間を延ばしていくことが大切ですね。

 

飯嶋:真に豊かに生活するためには、健康寿命と実際の寿命のギャップを埋めていくことが今後課題になってくるかと思います。

山田さんから俯瞰的に見ると、この辺りについてはそうお考えですか。

 

山田:日本の医療の発展が、ある種それを阻害している面もあると考えています。医療が発展したあまり、「病気になっても病院に掛かればいいや」というメンタリティが国民の中に生まれてしまっている。医療への過剰依存があって、結果日本人の健康に対する意識が低下してしまっているんです。そうなれば医療費は嵩むし、病気になってから寿命を延ばすことになり、とてもじゃないが健康寿命が延びているとは言い難い。そうならないためには予防の意識が重要です。それぞれが自分の体調管理、コンディショニングとチェックを行う。自分の身体の状態にもっと関心を持たないといけない。それは食事や運動に気を遣い、それぞれを適切に行うことにもつながります。逆説的な言い方になってしまいますが、医療のお世話にならない、元気でいられる時間を延ばしていくことが大切ですね。
健康寿命の在り方については、まだまだ議論の余地があります。20年、30年後にはどうなっているか、今の段階ではうまく想像できません。医療技術が発展すれば、ただの延命ではなく健康寿命を延ばすことが可能になるかもしれない。一方で、地球環境等も考えると、将来的には不安要素も多いです。
しかし、悪い方ばかりに考えてしまうことは何も生み出しません。ある程度のポジティブシンキングを持って、できることをコツコツやっていく目線も重要です。

未来がわからないこそ、
全員活躍ができる会社へ向けたチャレンジを続ける。

 

トライ&エラーは、チャレンジングな経営をして事業を発展させていくためには必要不可欠。

飯嶋:もしもう一度人生があったらこうしたい! というのはおありですか。

 

山田:どうせ時間があるなら、全然違うことをやってみたいですね!(笑)

 

飯嶋:山田さんは安定している道と常にプレッシャーがかかる道、 ふたつあれば後者を選ぶような方だと思っているのですが(笑)

 

山田:私は意外に用心深いところもありまして。 経営に関しても、小さなケガはしても大きなケガはしないよう心掛けているところもありますよ。ロート製薬の経営も、小さなケガ、小さな失敗をすることはしばしばあっても、大きな失敗はあまりなかったからこそ、ここまでは続けてこられたのかな、と思っています。企業は続かないと意味がないですからね。 トライ&エラーは、チャレンジングな経営をして事業を発展させていくためには必要不可欠ですが、そのエラーで企業が壊滅的な状態になっては元も子もない。エラーしても計算内にあるようなエラーに収まるよう、大ケガもしないように心掛けています。

飯嶋:私も会社経営していますが、それでも日々プレッシャーに押しつぶされそうになっています。明日生きていけるのか?
年を越せるのか?って……。

 

山田:だからこそ飯嶋さんは生き生きしているところもあるんだと、私は思っていますよ(笑)
ロート製薬は100年以上続く企業ですが、飯嶋さんのフラームジャパンのように0からスタートアップでやっている企業さんは本当にすごいと思います。聞きたい人はたくさんいると思うから、そういうことをもっと発信したほうがいいと思うよ。

時代の行く末は未知数。
だからこそ、どんな時代にも対応できるよう、社員全員が活躍できる企業を作りたい。

 

飯嶋:お祖父様から受け継いできた伝統あるロート製薬様ですが、現在山田さんは「NEVER SAY NEVER」をスローガンに掲げ、
さらに新しいことにチャレンジしていっているような印象を受けます。今後の経営の展望などはありますか。

 

山田:時代が決めることですので、ロート製薬が今のまま発展し続けるかはわかりません。そうである以上、なるべく社員全員が活躍できる方向にシフトしていきたいと考えています。
ロート製薬は確かに121周年を迎えた伝統的なベースがある企業ですが、今後は新たな違うステップに進むことも重要になってきます。一方では農業、また一方では再生医療と様々な新しい事業にもチャレンジしているところですし、そういった新事業もトップダウンではなく独自にそれぞれ成長していくようしていきたいですね。